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<Editor’s Column> 美食の街イスタンブールを丸裸にする、注目の新書。 外食産業がこぞってこの地に集まる理由とは…。
「FAREは、いわゆるオタクのための書籍であり、ローカルな用語集まで網羅した旅行誌です」ファウンダーであり、編集長でもあるベンジャミン・マービスは話す。かといって、決して偏ったマニア向けの専門誌とも異なる。誌面は極めてカラフルで官能的。食とコミュニティ、歴史を軸に、一つの都市の魅力を独自のレポート、エッセイ、インタビューを交え、万華鏡を覗くがごとく多様に映し出す。
ここでベンジャミン・マービスの経歴についても触れておきたい。彼はフィラデルフィア出身で、スコットランドと英国で中世の歴史を研究した後、コペンハーゲンを代表するレストラン、Nomaの共同オーナーであり、料理長のレネ・レネゼッピとともに働いていたという。
ちなみに、Nomaは英国のRestaurant誌で、2010年から5度も世界1位を獲得。Time誌が”Nomanics”と呼ぶほどの経済効果をデンマークにもたらし、「食」を目的にデンマーク観光に訪れる文化を生み出した伝説のレストランでもある。北欧特有の素材を活かした革新的な調理法と他国の食文化をも融合した独創的な料理を提供し、ガストロノミー界を超えて国内外に与えたインパクトとその功績は極めて大きい。
レネ・レネゼッピとの刺激的な出会いと彼の協力を仰ぎ、編集長であるベンジャミンが創刊号で採り上げたのが、進化する「食の都」イスタンブールである。この地は従来のツーリストばかりでなく、世界の料理人や投資家たちからもとりわけ熱い視線を集めている。
ご存知のように、イスタンブールはトルコ最大の都市であり、オスマン帝国の長い歴史において輝かしい栄華を誇り、様々な局面で重要な役割を果たしてきた。もちろん、現在も経済・文化・歴史の中心地でもある。
トルコ各地からの移住者が集まるこの地は、様々な地方料理が一堂に会する、食の宝庫でもある。海に囲まれて農作物に適した肥沃な大地に恵まれた地理的な利点は特に大きい。世界の三大料理の一つに挙げられるトルコ料理だけでも、地方により食材や調理法が異なり、イスタンブールのトルコ料理だけでも実にバリエーション豊富だ。多くの外国人が居住していること、共働きによる生活様式の変化、中間層の購買力向上などを背景に、イスタンブールの外食市場は昨今、目覚ましい成長を遂げている。
外食市場は、ここ10年で大きく様変わりし、各国料理レストランのほとんどがトルコ市場へ参入を果たした。トルコの外食市場は既に500億ドルに達し、その内の半分弱はイスタンブールである。トルコ人の平均外食率は月に2回ほどだが、イスタンブールに限っては週に2回まで増えるという。国際都市イスタンブールは、レストラン、カフェ、ビュッフェなど、目的や予算に応じて外食の選択肢も豊かだ。寿司レストランやステーキハウスなどの多国籍料理店も急増している。外国資本のハイグレードなレストランも増え、ビジネス接待などにも多く利用されるファインダイニングレストランなども増えつつある。この地は、時代とともに進化する「食の都」だ。この港街に一度足を踏み入れたなら、誰もが美食に胸踊らすに違いない。
最後に、編集長ベンジャミンが創刊号で意図したイスタンブール像についてもおしえてくれた。
「私はここで暮らす普通の人たちの日々の営みを通して、この都市の”美しいカオス”を見せたいんです。イスタンブールでは、誰もがハッピーで、人生は素晴らしい、というポジティヴな側面ではなく、この地は多くの人にとっては困難と背中合わせであったり、希望をすっかり失いかけている人も少なからずいます。そのような現状を踏まえ、一人ひとりの物語に多くの焦点をあてたいと思っているんです」
FAREは、人々の暮らしをリアルに描き出す”Life Story”でもある。
今後の特集で、日本のとある都市が既にリストアップされているという。我々のふだん気づきもしないありふれた美しい日常を彼がどう見せてくれるか、想像するだけで待ち遠しい
→NOMA
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